人は変わらないのではない 考え直さない人が変わらない
「人は変わらない」と言われることがあります。
たしかに、何年経っても同じ反応を繰り返し、同じような失敗をし、同じような言い訳をする人を見ると、そう感じるのも無理はありません。
ただ私は、少し違う見方をしています。
人は変わらないのではなく、考え直さない人が変わらない。
日々の出来事を受け取り、誰かの考えに触れ、それを自分の中に戻して考え直す。この思考の往復がある人は、少しずつ変わっていきます。
逆に、その往復がなければ、経験を積んでも人は変わりません。
今回は、「人は変わらない」という言葉を別の角度から整理してみます。
「人は変わらない」と言われる理由
人が変わらないように見えるのは、本人が何も経験していないからではありません。むしろ多くの場合、十分に経験しています。
失敗もしている。注意も受けている。誰かの助言にも触れている。それでも変わらない人がいます。
なぜか。
それは、経験したことを自分の思考に戻していないからです。
出来事が起きたときに、
- 相手が悪い
- 上司の指示が悪い
- 環境が悪い
- 自分は悪くない
という形で処理して終われば、考え方は更新されません。
同じことが起きれば、また同じ反応をします。だから周囲から見ると、「この人は変わらない」と見えるのです。
変わる人は、経験を思考に戻している
一方で、変わる人は少し違います。
何かが起きたときに、単に反応するのではなく、一度立ち止まります。
- なぜこうなったのか
- 自分の見方に偏りはなかったか
- 相手の前提を理解できていたか
- 次に変えるべきことは何か
こうした問いを自分に返します。
つまり、経験をただ通過させるのではなく、自分の思考に戻しているのです。
人を変えるのは経験の量ではありません。経験をどう解釈し、どう自分の中で組み直したかです。
考えているようで、実は考えていないことも多い
仕事をしていると、考えているようで実は反応しているだけ、という場面は少なくありません。
指示に従う。前例をなぞる。空気を読む。波風を立てない。責任を避ける。
これらは一見すると仕事をしているように見えます。しかし、そこに「そもそも何が目的か」「このままで良いのか」「自分は何を変えるべきか」という問いがなければ、思考は深まりません。
その結果、年数を重ねても考え方が変わらない。役職が上がっても判断の質が変わらない。そういうことが起きます。
これは能力の問題というより、思考を更新する習慣の問題だと思います。
変わる人に必要なのは、素直さより更新力
よく「素直な人は伸びる」と言われます。
たしかに一理あります。ただ、ここでいう素直さは、単に言われたことを聞くことではありません。
大事なのは、他人の考えを一度受け取り、そのうえで自分の考えを見直せることです。
私はこれを、素直さというより認識の更新力だと考えています。
自分の考えを絶対視せず、他人の意見を丸のみもせず、必要な部分を受け取って自分の思考を組み直す。この力がある人は変わります。
逆に、表面的に従っているだけでは変わりません。その場は合わせられても、状況が変わればまた元に戻るからです。
「人は変わらない」は半分正しく、半分危うい
「人は変わらない」という言葉には、現実味があります。
実際、何度言っても変わらない人はいます。同じ失敗を繰り返し、反省しているようで次も同じことをする人もいます。
その意味では、「人は変わらない」は半分正しいと思います。
ただし、そのまま受け入れるのは危ういとも思います。
なぜなら、この言葉はときに、相手を見ることをやめる言葉にもなるからです。
「どうせ変わらない」と決めつけると、その人に残っている変化の余地も見えなくなります。変わるきっかけを設計することもやめてしまいます。
つまり、「人は変わらない」は相手への評価であると同時に、こちら側の諦めでもあるのです。
管理職やリーダーが見るべきこと
では、管理職やリーダーは何を見ればよいのでしょうか。
私は、「今できるかどうか」だけではなく、その人に考え直す余地があるかどうかを見るべきだと思います。
他人を直接変えることはできません。人が変わるのは、本人が考え直したときです。
だからこそ、周囲ができるのは、考えざるを得ない状況をつくることです。
- 行動の結果を見えるようにする
- なぜそう判断したかを言語化させる
- 失敗を反省で終わらせず、次の行動に接続させる
- 責任の範囲を曖昧にしない
- 逃げられないが、潰れない範囲で任せる
そこで考え始める人は変わる可能性があります。逆に、そこで言い訳しかしない人は、今のままでは変わりにくいでしょう。
まとめ
私は、「人は変わらない」という言葉をそのまま信じていません。
正確には、こうだと思っています。
人は変わらないのではない。考え直さない人が変わらない。
人は、経験したから変わるのではありません。経験を自分の思考に戻し、他人の考えに触れ、もう一度自分の考えを組み直したときに変わります。
変わる人は、日々その往復をしています。変わらない人は、その往復をしていません。
だから見るべきなのは、表面的な素直さや経験年数ではなく、その人に思考を更新する習慣があるかどうかです。
「人は変わらない」と切り捨てる前に、その人が考え直す余地を持っているかどうか。
そこを見ることが、組織においても、人を見るうえでも大切なのだと思います。


















コメント